円高防止の協調介入
主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁による緊急の電話会談が18日朝に開かれ、東日本大震災と福島原発事故の影響による急激な円高防止のための為替市場への協調介入が実施された。背景には、日本経済が危機的状況に陥り、世界経済に悪影響を及ぼすことを回避したいとの各国の思いがある。為替介入に参加するのは、日本、米国、英国、カナダ、欧州の通貨当局である。協調介入は、日米欧当局が協力してユーロ買いを実施した2000年9月以来となり、円高防止では、日米独の通貨当局が協調介入した1995年8月以来となる。協調介入に踏み切らせたのは、震災後6日目となる17日早朝のシドニー市場で1ドル=76円25銭(報道による為替レート)の史上最円高を付けたことである。海外投資家が市場参加者の少ない(取引量も少ない)市場で円高を狙ったもので一気に5円程度円高が進んだ。震災後、特に原発事故の事態が悪化するたびに株価が下落し、円資金を手元に置こうという日本の金融機関や企業が増加傾向にあるのではとの思惑や、投機的な動きが円高を進めた。
短期的な円高の可能性について、過去を見てみると様々な天災などで被災国通貨が持続的に売られたことは少ない。例えば2005年米国を襲ったハリケーンカトリーナの後の米ドル高や、1995年4月に円がドルで最高値を付けたのは、同年1月の阪神淡路大震災から3ヶ月後であった。今後は生損保などが保険金の支払いのための大規模なリパトリエーション(海外から日本へ資金送還)の可能性、既存の外債投資の償還で新規の対外投資が手控え、日本の投資家のリスク許容低下の影響が円高圧力を後押しすると思われる。さらに19日から米英仏を中心とする多国籍軍が、リビアに軍事介入を開始した。湾岸戦争開戦時でもそうであったように、中東地域での軍事介入前後は有事のドル買いではなく、ドル安で市場は反応している。今後リビアへの軍事介入が長期化する可能性を秘めており、一段のドル安、円高を警戒する必要がある。
米国では震災や原発事故の影響でニューヨーク株式市場が不安定な値動きを警戒している。米国経済と関係の深い日本経済が落ち込めば、回復しつつある米国の雇用や経済にも悪影響が出かねないとの事情がある。欧州圏でもギリシャやアイルランドが財政危機に陥り、大きな財政赤字を抱えるポルトガルやスペインなども厳しい財政運営を続けており、日本発の経済危機が現実的なものとなれば欧州圏経済への悪影響も決して小さくない。このように各国が協調介入に至った背景も深刻であり、一方的な円高が放置される状況にないと思われる。
目先の見方としては、これまで通り「原発事故悪化→株安→リスク回避の円買い VS 協調介入(警戒感)」である。注目点は、原発事故の進捗状況と協調介入の継続ということになる。